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1970年の夏、海辺の街に帰省した〈僕〉は、友人の〈鼠〉とビールを飲み、介抱した女の子と親しくなって、退屈な時を送る。2人それぞれの愛の屈託をさりげなく受けとめてやるうちに、〈僕〉の夏はものうく、ほろ苦く過ぎさっていく。青春の一片を乾いた軽快なタッチで捉えた出色のデビュー作。群像新人賞受賞。 (出版社紹介文より引用)



いわゆる「羊三部作」「鼠三部作」(ダンス・ダンス・ダンスを含むと四部作)の、そして「ノルウェイの森」にも繋がっていくシリーズの第一作であり、作者の原点といえる作品です。
それまでの日本文学の私小説的な湿っぽい文体とは明らかに一線を画した文体で、発表当時「斬新だ、クールだ」と評されたポップで軽快な文体、断片化された文章(小説のフラグメント化)が特徴的です。

平易で簡潔な文章のため読みやすく、洗練された文章と思うかもしれませんが、個人的にはそうではなく、文章に対する信念が作者の中で明確に確立されているためそう思わせるのだと思います。ただ、決して洗練されていない文章と言いたいわけじゃないのであしからず。
作者自身は、断片化された文章は当時の生活環境(ジャズバーを経営しながら深夜に執筆を行っていた)の為せる業であり、個人的にはそれをあまりよく思っていないと語っていますが(それで職業作家となるわけですが)、それはそれとして、やはりこれは革新的な作品であるといえるのではないでしょうか。

処女作にはその作家の全てが詰まっている」みたいな言葉があった気がするのですが(曖昧な記憶で申し訳ない…)、この作品からもそれは感じられます。乾いた文体、気の利いたジョーク、巧妙なレトリック、過ぎ行く時の哀しみ、喪失、ある種の潔癖さ、過去との対峙、失われるもの、青春の淡い記憶、etc... でも一番感じるのは、作者の文章に対する誠実さです。勿論作家たる者、皆真摯な姿勢で小説と向き合っているわけですが、村上春樹独特の小説観(創作観)が、この何ともいえない読後感を産むのではないかなと思っています。

以上。【風の歌を聴け】の紹介&レビューでした<(_ _)>